転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
 ◇


 ――その後、俺はあれから何がどうなったのか説明を受けた。
 その内容は主に以下のとおりだった。

 一つ目は、坑道の瘴気は無事に浄化されたということ。
 二つ目は、今俺たちが、ユリシーズの伯父であるノーザンバリー辺境伯の世話になっているということ。

 そして、三つ目は――。


「――は? 今、何て?」

 一つ目、二つ目の話はふんふんと聞いていた俺だったのだが、三つ目の話を聞かされた瞬間、俺は強いショックを受けた。

 なんと、リリアーナとセシル、グレンの三人が、つい先ほど街を発ったというのだ。
 行先は北の国境。本来の目的である、瘴気の浄化のためにである。


「嘘だろ? 冗談だよな? そんなまさか……リリアーナが俺を置いていくなんて……」

 そんなことが有り得て堪るか。
 リリアーナが俺を置いていくなんて……そんな馬鹿なことが……。

 肩を震わせる俺を、宥めるようなユリシーズの声。

「違うんだよ、アレク。リリアーナは君が目覚めるまで待つって聞かなかったんだ。君が倒れた日の夜も、次の日も、リリアーナは君を一日中看病してた。少しは休まないとって言うセシルや僕の言葉も聞かず、ずっと君に付き添ってたんだ」
「……っ」
「でも、リリアーナにも疲れの色が見えていたし……正直、あのままじゃ共倒れになると思った。それにマリアは昨日のうちに国境の浄化の準備を全て整えていたから。聖下の指示通り、現地にいる魔法師とは別に、追加で三十人の人員をね。魔法師は皆忙しいから、計画は速やかに実行に移す必要がある。だから僕らは、リリアーナに瘴気の浄化を優先するようにお願いしたんだ。君と物理的に離した方がいいと思ったのもあって…………最初は嫌がってたけど、アレクは僕が見てるからって説得したら、最後はわかってくれたよ」
「……そう……だったのか」
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