転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
そうとも知らず、俺は一瞬でもリリアーナを疑ってしまった。――最低だ。
俺は自己嫌悪に陥った。と同時に、リリアーナのことが心配で居ても立っても居られなくなった。
ストレスで過呼吸を起こし、坑道の瘴気の浄化――そして俺の看病までした上、今度は北の国境へ。
そんなハードスケジュールを、たった十五歳のリリアーナにやり切ることができるのだろうかと。身体を壊してしまうのではないか、と。
「なぁ、ユリシーズ。リリアーナは本当に大丈夫だと思うか? 地下の瘴気は凄く濃かったんだ。グレイウルフと戦った森なんかとは比べ物にならないくらい。あんな濃い瘴気を浄化して、すぐにまた国境の浄化だなんて……本当に、リリアーナにできると思うか?」
俺が尋ねると、「ああ、それはね……」と、ユリシーズは言いにくそうに口を開ける。
「実は、坑道の瘴気を浄化したのはリリアーナじゃなくて――」
ユリシーズがそう言いかけると同時に、窓側から突然聞こえてきたその声は――。
「実は僕なんだよね、瘴気を浄化したの」
――いつの間にやら部屋に入り込んでいた、ロイドのものだった。
「――っ!?」
ユリシーズと共に声のした方を振り向くと、さっきまで閉まっていたはずの窓が開け放たれ、その窓枠にロイドが堂々と腰かけている。
「ロイド! お前、いつの間に……! ってかここ二階だろ!? どうやって……」
俺が声を上げると、さも当然であるかのように微笑むロイド。
「え~、だって鍵空いてたし。僕にとっては一階も二階も関係ないし」
「関係ないってお前……。――いや、そんなことより、今のはどういうことだよ。坑道の瘴気、お前が浄化したっていうのは本当なのか?」
「うん、ほんとだよ」
ロイドは窓に腰かけたまま足をブラブラと揺らし――スタッと床に着地すると、窓を閉める。
「だって、聖女さまよく眠ってたし。起こしたら可哀そうだと思ったから」