転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
そう言ってわざとらしく首を傾けるロイドの答えは、俺の聞きたい内容からは外れていて――。
ロイドに聞いても埒が明かないと思った俺は、ユリシーズの顔を見る。
するとユリシーズは難しい顔をして、小さく頷いた。
「彼の言っていることは本当だよ。僕はセシルから聞いたんだけど、坑道の瘴気は全て彼が浄化したんだ」
「いや、だって、おかしいだろそんなの! そんなことができるなら最初から――!」
そうだ。そんなことができるなら、最初からロイドが瘴気を浄化してくれていればよかったんだ。
そしたら俺たちが坑道の瘴気を浄化する話にはらなかったし、ユリシーズが怪我をすることも、リリアーナが怖い思いをすることもなった。
俺はロイドを怒鳴りつける。
「お前まさか、魔物と戦いたいがために瘴気を放置してたって言うんじゃないだろうな!?」
ロイドは言っていた。自分は魔物と戦うために神官になった、と。
そしてこうも言っていた。瘴気の浄化は退屈だ、と。
もしもそんな理由で、浄化できるはずの瘴気を放置していたのだとしたら――俺はこいつを許せない。
俺はロイドを睨みつける。
すると、不本意だと言いたげに顔をしかめるロイド。
「確かに君がそう思うのも無理はない。でも違うよ。僕が最初瘴気を浄化しなかったのは、できないことになってるからだ」
「……できないことになってる、だと?」