転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
その言葉の意味がわからず、俺は聞き返す。
「そうだよ、できないんだ。もしもあの瘴気が普段の瘴気と同じ規模だったら、僕だってちゃんと浄化してた。でもあれはそうじゃなかった。僕に浄化できたらおかしいレベルの瘴気だったんだ。だから僕は放置した」
「なら……どうして最後は浄化したんだよ? 矛盾してるだろ」
「それはあの場に聖女さまがいたからだよ。あの瘴気を実際に浄化したのは僕だけど、皆の知る事実は違う。"瘴気は聖女さまが浄化した"ってことになってるんだ。僕が浄化したことを知るのは、君たち五人と僕だけだ。マリアだって知らないことだよ」
「……っ」
「だからそんな怖い顔しないでよ。僕、結構君のこと気に入ってるんだ。そんな君にそういう顔されると……正直、傷付く」
その言葉に、ロイドのどこか寂しげな笑みに、俺は何も言えなくなった。
ロイドの語った理由には到底納得できないけれど、ロイドにはロイドなりの理由があったのだと思い知ったのだ。
同じ神官であるマリアにも秘密にしているロイドの真の力。
リリアーナでも簡単には浄化できないであろう広範囲の瘴気を、聖魔法ではなく光魔法によって浄化してしまえるほどの絶大な魔力。
確かにそれは、周りに知られたら厄介な力に違いない、と。
すっかりおとなしくなった俺に、今度はユリシーズが問いかける。
「それで、どうする?」――と。
「どうするって……何が?」
尋ね返すと、ユリシーズは静かに答える。
「彼の言ったとおり、リリアーナは鉱山で魔力を使っていない。国境の浄化に必要な魔力は十分温存している状態だ。それに、セシルもグレンもマリアもいる。物理的には何も危なくないだろう。――でも、それでも君がリリアーナと共にいることを望むなら、伯父上に頼んで馬車を出してもらうこともできる」
「……ッ!」
――ああ、それは、今からでもリリアーナを追いかけられると……そういうことか?
(……でも)