転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
「……うわ。ロイドお前……怖。探偵かよ」
「たんてい?」
「いや、何でもない。……つまり、俺がぶっ倒れたのは全部瘴気が原因だったってことか?」

 俺が尋ね返すと、「多分ね」と頷くロイド。

「確証はないけど、君の体調不良がノースフォードを出てからのことだって言うならそうなんだと思う。ノースフォードより内側は聖下の加護があるから大丈夫だったんだろうけど。それに……」

 ロイドは言いかけて、俺たちに背を向けると訓練場の壁の方へと走っていく。
 そしてそこに立てかけてある俺の聖剣の柄を握りしめ、一気に鞘から引き抜いた。


「――あっ! お前、何を……!」


 驚く俺の視線の先で、聖剣の刃が太陽の光を反射して、眩しく煌めく。
 ロイドはその刀身をひとしきり眺めて、こう言った。

「やっぱりこの聖剣、ほとんど魔力が残ってない」と。

「――はっ? それ、いったいどういう……」

 より一層驚く俺のもとに、聖剣を手にしたロイドが駆け戻ってくる。

「ほら、見てよ。って言ってもアレクにはわかんないか。――ユリシーズ、この聖剣握ってみて」
「……え?」
「大丈夫だから、ほら、早く」
「……っ、でも、僕は……!」

 嫌がるユリシーズの手に、無理やり聖剣を握らせるロイド。――だが……握っても何も起きなくて。

 本来なら、聖剣は光魔法師、あるいは魔力が極端に少ない――つまり、俺のように魔法の才能がない者にしか握れない。

 異なる属性の魔法師は、魔力の反発を起こして触れることすらできないはずなのだ。
 それなのに、ユリシーズは何事もなく握っている。

 つまりそれは、聖剣内に反発するほどの魔力が残っていないということを意味していて。

 ということは、俺が蛇の魔物と戦ったとき、聖剣の威力が落ちている気がしたのは気のせいではなかったのだ。

「本当だ。君の言う通りこの聖剣、魔力が全然残ってない」
「だから大丈夫って言ったでしょ?」
「いや、でも、だって……この聖剣、ほとんど使ってないはずなのに……!」

 そうだ。ユリシーズの言う通り、俺はまだこの聖剣をほとんど使っていない。
 だが、どういうわけか魔力は失くなってしまっている。

 その理由は――。
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