転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
「それはきっと、聖剣がアレクの体内の瘴気を浄化してくれていたからだよ。そのせいで魔力を消費しきっちゃったんだ」
「……!」
「こんなこと言いたくないけど、この聖剣が無かったら、アレクは瘴気に侵されてとっくに死んでたと思う」
「――ッ」
ユリシーズは再び絶句する。
俺も、正直……驚きすぎて言葉が出ない。
けれどそんな俺たちの暗い気持ちを一蹴するように、ロイドは平然とこう続けた。
「ちょっと、やめてよ。別にそこまで悲観することないでしょ? 気を付けていれば死ぬ病気ってわけでもないんだし。今気付いて良かったんじゃないの?」
「……いや……まぁ、それはそうなんだけど……」
(ロイドって、やっぱりちょっと変わってるな)
まぁ、それがこいつの長所であり、逆に大きな短所でもあるわけだが……ロイドがいるとシリアスがシリアスにならないから凄い。
(っていうかそもそも、俺たちが暗くなってるのはお前が俺を"死んでたと思う"だなんて言ったのが原因だからな?)
「はぁ……ま、いいや」
俺は大きな溜め息をつき、ユリシーズに声をかける。
「ユリシーズもあんまり気にするな。ロイドの言う通り、今気付けて良かったと思うことにしよう。――で、ロイド。俺はこれからどうすればいいんだ? その魔力の滞りっていうのは、お前の力でなんとかできないのかよ?」
「うーん、どうかなぁ。試してみてもいいけど、こんなケース初めてだし、だいたい僕、治癒魔法系統は全部禁止されてるし……」
「そう言えばそうだったな」
「って言っても、君の魔力の流れの滞りを改善するとしたら、それは厳密には治癒魔法ではないんだけど……ただ僕の魔力を君に注ぐっていう点では変わらないから、失敗したらそれこそ即死だと思うんだよね」
「それは流石に嫌だ……」
「そうだよね。……んー。何かいい方法ないかなぁ」
俺とユリシーズの見守る中、ロイドはしばらくの間、うーんうーんと言って頭を悩ませていた。
けれど少しして、何かを閃いたのか、人差し指をピンと立てる。
「あっ、わかった!」
そう叫んで、ロイドが言い出したことは――。
「アレク、君、一度限界まで魔法を使ってみてよ! 君の体内の魔力を空っぽにすれば、僕の魔力を注いでも反発しない。これならきっと大丈夫!」
――なんとも単純だけれど、魔法が苦手な俺にとってはあまりにも大変な方法だった。