転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜

 そのあまりにもらしくない(・・・・・)言葉に、俺は口の中のプディングを一気に飲み込んだ。これがプディングじゃなければ窒息していただろうというくらい、勢いよく。

「ぐっ――ゲェ、ッホ、――エホッ、エッホ……!」
「ちょ……アレク、大丈夫!?」
「まぁ、いけませんわ、お兄さま! さ、お茶を!」

 むせまくる俺の背中をユリシーズがさすり、リリアーナがティーカップを差し出してくれる。
 ――が、このお茶がまた熱すぎて、俺はユリシーズの顔に思いきり噴き出してしまった。

「ちょ――っ、アレク!」
「まぁ! 申し訳ありませんお兄さま! このお茶入れたてでしたわ……!」

 そう叫んで、今にも泣きだしそうになるリリアーナ。
 俺は苦しいやら熱いやら何やらで、もう何が何だかわからなくなった。――が、必死に言葉を絞り出す。

「いや……大丈夫。ちょうどいい温度だったよ、リリアーナ。……それよりも、どうしたんだ。急におかしなことを言ったりして」

 けれど、リリアーナは意味が分からないと首を(かし)げた。

「わたし、何か言ったかしら?」
「言っただろ。〝次に俺にプディングを食べてもらえるのはいつになるか”って……」

 するとリリアーナは、ようやく合点が言ったという顔をする。

「申し訳ありません、お兄さま。肝心なことを伝えて忘れておりましたわ。わたし、明日神殿に参ることになりましたの」
「――!?」
「先ほど神殿から使いが参りまして、聖下のご予定が空いたから来てほしい、と。滞在期間がどれくらいになるかわからないから、よく準備をしておくように、とも言われましたわ」
「いや、何だよそれ!? 流石に明日は急すぎるだろう!? それに滞在期間不明って……。ユリシーズ、お前も何か言ってくれ!」
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