転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
25.厳しい現実
――体内の魔力を空っぽにしてみてよ。
ロイドのその言葉を受け、俺はさっそく魔法を使ってみることになった。
と言っても、俺が使えるのはとても弱い重力魔法のみ。ペン一本を浮遊させるのだけで精一杯だ。
それに、前世の記憶を思い出してからというもの俺は一度も魔法を使っていない。
そもそも、俺はちゃんと魔法を使えるだろうか? 実は使えなくなっていました、などというオチはないだろうか。――不安に思いつつ、俺はロイドとユリシーズの前で魔法を発動させてみる。
その辺に落ちている小石に意識を集中させ、「浮け」と念じた。
すると――。
(おお……! マジで浮いた……!)
正直、どうして浮いたのかはわからない。が、アレクの身体が魔法の使い方を覚えているのか、小石が地面から浮き上がる。
それを見たロイドは、キラキラと目を輝かせた。
「すごい! ほんとに浮いた! 僕、重力魔法を見るのは初めてだよ! 面白ーい!」
小さな子供のようにはしゃいで、小石を色々な角度から眺めている。
「ねぇアレク! この小石、遠くに飛ばしたりもできるの!?」
「残念ながら無理だ。俺の力じゃ、持ち上げるだけで精一杯」
「えー、そっかー、残念。魔力の流れが滞ってるせいでコントロールが難しいのかな。――持続時間はどれくらい?」
「さぁな。限界まで試したことはないから……でも多分、持って二、三分ってとこか」
「そっか、短いね。その長さだとちょっと厳しいかなぁ」
ロイドは再び「うーん」と唸って、再び俺の手を握った。
本日二度目のことなので、俺も今度は驚かない。
ロイドは十秒ほどで手を放したが、やっぱり難しい顔をしている。
そんなロイドの表情に、ユリシーズは何かを悟ったように話しかける。
「アレクは昔から魔法がほとんど使えないんだ。連続で発動させるのも苦手だし……僕はそれが魔力が少ないせいだと思っていたけど、君の言ったとおり本当は魔力はあるってことなら、さっきの君の提案を実行するのは難しいと思う。アレクの今の魔法じゃ、魔力を消費しきれない」
「そうだね、確かに。僕も今確認してみたけど、アレクの体内の魔力の流れは蛇口をほとんど閉められている状態だった。だから、本当は沢山ある魔力のうちの、ほんの少ししか流れていかない。少しの魔力では小さな魔法しか使えないし、これじゃあ消費しきるのは難しいだろうね。――まぁでも、無理やりにでもずっと魔法を使っていれば多少なりとも魔力は減っていくはずだし、一度試してみよう」
他に方法もないし――と、そう続けたロイドは、とにかく今日一日俺に魔法を使い続けるように指示をした。
俺はその指示通り、何度も何度も魔法を使った。小石が地面が落ちる度、すぐに魔法を発動させる。
十回、二十回、三十回――失敗しようが構わない。とにかく、魔力が底をつけばいいのだから。
だが、四時間経っても五時間経っても、俺の魔力が尽きることはなかった。
まぁ当然だ。
俺のショボい浮遊魔法は、ユリシーズの氷の防御魔法に比べ、魔力消費量は何十分の一程度なはずなのだから。
結局俺の魔力は夕方になっても底を尽きず、その日の特訓は終了した。
ロイドのその言葉を受け、俺はさっそく魔法を使ってみることになった。
と言っても、俺が使えるのはとても弱い重力魔法のみ。ペン一本を浮遊させるのだけで精一杯だ。
それに、前世の記憶を思い出してからというもの俺は一度も魔法を使っていない。
そもそも、俺はちゃんと魔法を使えるだろうか? 実は使えなくなっていました、などというオチはないだろうか。――不安に思いつつ、俺はロイドとユリシーズの前で魔法を発動させてみる。
その辺に落ちている小石に意識を集中させ、「浮け」と念じた。
すると――。
(おお……! マジで浮いた……!)
正直、どうして浮いたのかはわからない。が、アレクの身体が魔法の使い方を覚えているのか、小石が地面から浮き上がる。
それを見たロイドは、キラキラと目を輝かせた。
「すごい! ほんとに浮いた! 僕、重力魔法を見るのは初めてだよ! 面白ーい!」
小さな子供のようにはしゃいで、小石を色々な角度から眺めている。
「ねぇアレク! この小石、遠くに飛ばしたりもできるの!?」
「残念ながら無理だ。俺の力じゃ、持ち上げるだけで精一杯」
「えー、そっかー、残念。魔力の流れが滞ってるせいでコントロールが難しいのかな。――持続時間はどれくらい?」
「さぁな。限界まで試したことはないから……でも多分、持って二、三分ってとこか」
「そっか、短いね。その長さだとちょっと厳しいかなぁ」
ロイドは再び「うーん」と唸って、再び俺の手を握った。
本日二度目のことなので、俺も今度は驚かない。
ロイドは十秒ほどで手を放したが、やっぱり難しい顔をしている。
そんなロイドの表情に、ユリシーズは何かを悟ったように話しかける。
「アレクは昔から魔法がほとんど使えないんだ。連続で発動させるのも苦手だし……僕はそれが魔力が少ないせいだと思っていたけど、君の言ったとおり本当は魔力はあるってことなら、さっきの君の提案を実行するのは難しいと思う。アレクの今の魔法じゃ、魔力を消費しきれない」
「そうだね、確かに。僕も今確認してみたけど、アレクの体内の魔力の流れは蛇口をほとんど閉められている状態だった。だから、本当は沢山ある魔力のうちの、ほんの少ししか流れていかない。少しの魔力では小さな魔法しか使えないし、これじゃあ消費しきるのは難しいだろうね。――まぁでも、無理やりにでもずっと魔法を使っていれば多少なりとも魔力は減っていくはずだし、一度試してみよう」
他に方法もないし――と、そう続けたロイドは、とにかく今日一日俺に魔法を使い続けるように指示をした。
俺はその指示通り、何度も何度も魔法を使った。小石が地面が落ちる度、すぐに魔法を発動させる。
十回、二十回、三十回――失敗しようが構わない。とにかく、魔力が底をつけばいいのだから。
だが、四時間経っても五時間経っても、俺の魔力が尽きることはなかった。
まぁ当然だ。
俺のショボい浮遊魔法は、ユリシーズの氷の防御魔法に比べ、魔力消費量は何十分の一程度なはずなのだから。
結局俺の魔力は夕方になっても底を尽きず、その日の特訓は終了した。