転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
――ユリシーズは、この五日で目覚ましい成長を遂げていた。
もともと魔法師として十分な素質があるやつだったから、その成長ぶりは納得だった。
けれど、それを毎日のように側で見せつけられると正直辛いものがある。
それに――だ。
(……俺……多分気付いちゃったんだよな。アレクがラスボスになる理由……)
――そう。
俺はこの五日、考えて考えて考えて、そして気付いてしまった。
アレクがラスボスになるのは、きっと俺のこのヘンテコな身体のせいなのだろうと。
魔力を正常に循環させることができない……このイレギュラーな身体をトリガーに、ラスボスへの道を歩むことになるのだろうと。
(だって……それしかねーもんな。……ラスボスになる理由なんて)
もしそうなら、このおかしな身体をどうにかすればラスボスになるのを回避できるということになる。
けれど逆に、これがゲームの設定だというのなら、治ることはないのではないか……?
どれだけ努力しようが、あがこうが、無駄なことなのではないか?
そんな無力感でいっぱいになって、俺はこの先どうしたらいいのか、全くわからなくなっていた。
バルコニーの手すりに身体を預け、俺は闇に沈んだ街を見下ろす。
まるで誰も住んでいないかのようにすら思える、暗く静かな街。――あの闇に、俺も紛れてしまいたい。