転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
26.それでも、俺は
「俺は帰らない」――と。
ユリシーズの気持ちを知っていながら。己の無力さを自覚していながら、それでも――と。
「でも……お前の言うことも理解できる。セシルとグレンがいればリリアーナは大丈夫だろう。リリアーナに、今の俺はきっと必要ない。そんなことはとっくにわかってるんだ」
「ならどうして? 僕らがここにいるのはリリアーナが心配だったからだろう? 君はリリアーナを守りたくて、ここまで付いてきたはずだ。でも今の君にその目的は果たせない。もしまた君が倒れたとき、一番傷付くのは誰だと思う? それは僕じゃない――リリアーナだ。君の最も大切な彼女が泣くことになる。君はそのことを、本当に理解しているのか?」
ああ――そうだ。ユリシーズの言うことは正しくて、いつだって正論で、一つも間違っていなくて。
ユリシーズは俺のこともリリアーナのことも、とても大切に思ってくれている。
その気持ちは、痛いほど伝わってくる。
でも、それでも俺は諦めたくない。この場所から逃げ出したくない。
「――アレク。悪いことは言わないよ。一度王都に戻って、そこで魔法の練習を再会したらいい。五日でこれだけできるようになったんだ。あと一ヵ月も練習すればもっと上手に魔法を使えるようになるよ。次のことはそのあと考えたっていいじゃないか。幸い国境の瘴気の浄化は順調に進んでいるみたいだし、それが終わればリリアーナも王都に戻ってくる。だから、僕らは一足先に帰ろう? 僕は……君の身体が心配なんだ」
そう言って、俺をまっすぐに見つめるユリシーズの瞳。
その強い眼差しに、俺は一瞬気圧されそうになって――けれど、どうにか首を振る。
「それじゃあ駄目なんだ」
「何が? どうして駄目なの? 何か他に理由があるの? あるなら、ちゃんと説明してくれなきゃわからない」
「悪い、説明はできない。でも一つだけ言えることがある。……王都には、ロイドがいないってことだ」
「…………」
「俺の身体のこと……俺自身にもよくわからないし、いつからこうだったのかもわからない。生まれつきなのか、後天的なものなのかすら。でも、誰ひとり気付かなかったことにあいつだけが気が付いた。だから俺は、この身体をどうにかできるのはあいつだけだと思ってる」
――だから、と、俺は続ける。
ユリシーズの気持ちを知っていながら。己の無力さを自覚していながら、それでも――と。
「でも……お前の言うことも理解できる。セシルとグレンがいればリリアーナは大丈夫だろう。リリアーナに、今の俺はきっと必要ない。そんなことはとっくにわかってるんだ」
「ならどうして? 僕らがここにいるのはリリアーナが心配だったからだろう? 君はリリアーナを守りたくて、ここまで付いてきたはずだ。でも今の君にその目的は果たせない。もしまた君が倒れたとき、一番傷付くのは誰だと思う? それは僕じゃない――リリアーナだ。君の最も大切な彼女が泣くことになる。君はそのことを、本当に理解しているのか?」
ああ――そうだ。ユリシーズの言うことは正しくて、いつだって正論で、一つも間違っていなくて。
ユリシーズは俺のこともリリアーナのことも、とても大切に思ってくれている。
その気持ちは、痛いほど伝わってくる。
でも、それでも俺は諦めたくない。この場所から逃げ出したくない。
「――アレク。悪いことは言わないよ。一度王都に戻って、そこで魔法の練習を再会したらいい。五日でこれだけできるようになったんだ。あと一ヵ月も練習すればもっと上手に魔法を使えるようになるよ。次のことはそのあと考えたっていいじゃないか。幸い国境の瘴気の浄化は順調に進んでいるみたいだし、それが終わればリリアーナも王都に戻ってくる。だから、僕らは一足先に帰ろう? 僕は……君の身体が心配なんだ」
そう言って、俺をまっすぐに見つめるユリシーズの瞳。
その強い眼差しに、俺は一瞬気圧されそうになって――けれど、どうにか首を振る。
「それじゃあ駄目なんだ」
「何が? どうして駄目なの? 何か他に理由があるの? あるなら、ちゃんと説明してくれなきゃわからない」
「悪い、説明はできない。でも一つだけ言えることがある。……王都には、ロイドがいないってことだ」
「…………」
「俺の身体のこと……俺自身にもよくわからないし、いつからこうだったのかもわからない。生まれつきなのか、後天的なものなのかすら。でも、誰ひとり気付かなかったことにあいつだけが気が付いた。だから俺は、この身体をどうにかできるのはあいつだけだと思ってる」
――だから、と、俺は続ける。