転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
――そうだ。俺は間違ったことは言っていない。
選択を間違えたとも思わない。
バッドエンドを回避するためだけじゃない。それ以外にも、この身体を治したい理由は沢山あった。
そうしなければ俺は俺のままでいられない、多くの理由が――。
俺はユリシーズを見据え、はっきりと言い放つ。
「お前に相談しなかったことは悪かったと思ってる。それについては謝る。でも俺は、自分の選択が間違いだったとは思わないし、たとえそれで死んでも後悔はしなかった。絶対にだ」
「……ッ」
すると、ユリシーズは悔しそうに顔を歪める。
やっぱり納得はできないと……そんな顔で……口を開く。
――が――そのときだった。
突然、フッと蝋燭の炎が消えたような感覚がして、俺の膝から力が抜ける。
と同時に、俺はようやく気が付いた。自分がずっと魔法を使い続けていたことに。
俺の頭上を浮遊する水球。そこに繋いだ魔力の線を切断するのを忘れ、ずっと魔力を注ぎ続けていたことに。
(しまった……! これ、魔力切れだ……!)
だが今ごろ気付いてももう遅い。
足の力が抜けた俺は、ユリシーズに押し倒される形で背中から地面にひっくり返る。当然、ユリシーズも一緒に。
そんな俺たちの頭上で、強制的に魔力の供給を絶たれた水球に重力が戻り――次の瞬間……。
――バッシャアアア!!!
と、盛大な効果音と共に、俺たちにぶっかかった。
そして数秒の沈黙……からの……。