転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜

3.いざ、神殿へ


 ――翌日。
 俺たちは神殿を目の前にして、そのあまりの荘厳(そうごん)さに(おそ)(おのの)いていた。


「神殿って……思ってたよりずっと広いんだな」
「そうだね。僕もこんなに近くで見るのは初めてだから」
「わたしも……何だかすごく緊張してきましたわ。どうしましょう……お兄さま」


 リル神殿――別名“水の要塞(ようさい)”は、王都北側の切り立った山の中腹に位置している。

 女神リル神の住まうリル湖を取り囲むような形で造られたリル神殿。
 その敷地面積は、街一つがすっぽり入ってしまうほど広大だ。

 加えて、水の要塞と呼ばれるほどの強固な守りは見事という他ない。

 敷地の北の絶壁からは高さ四十メートルのところから滝がざあざあと流れ落ち、東と西側は湖から流れ出た巨大な川が取り囲む。
 その川幅はなんと二十メートルにも及び、さらに川向こうには高さ三階建てに匹敵する堅牢な外壁がそびえ立つ。
 出入口は南側に一つしかないため、許可の無い者が立ち入ることはもちろん、中の様子を知ることすら不可能だ。

 それがこの国の国教の頂点に君臨するリル神殿。女神リル神が住まう聖域。
 そして国中の教会、そしてそこに仕える神官や神父、修道女(シスター)たちの母なる場所だ。

 ――そんな神殿に繋がる石橋の前に、今俺たちは立っていた。
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