転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
 ――そう。
 これは俺の身体が治ったときに三人で話し合って決めたことだが、俺の身体のことは三人だけの秘密なのだ。
 
 リリアーナにもセシルにも、当然マリアにも話していない。
 俺の身体がおかしかったことも、それをロイドに治してもらったことも、どちらも言わないことに決めたのである。
 唯一皆に伝えたのは、"ロイドに魔法の特訓をしてもらった"ということのみ――。

 俺とユリシーズが「当然だ」と頷くと、ロイドはごっくん、とシュークリームを呑み込み、ニコリと微笑む。

「わかってるならいいよ。でも気をつけてね。お酒が入るとうっかり口がすべるって、前に聖下が言ってたから。――じゃ、僕はデザートお代わりしてこよっと」

 何だか気になることを言い残し、ロイドは俺達に背を向ける。

 すると次の瞬間には、ロイドの姿は視えなくなった。
 本当に、ものの一瞬で視界から消えたのだ。

「……あいつ、何なんだ、マジで」
「彼はちょっと……規格外すぎるよね」

(ほんとに何でもアリなんだな、あいつ……)

 俺は多分、ロイドが裏ボスだったとしても驚かないだろう。
 むしろ納得してしまうほどだ。それくらい、ロイドの力は人知を超えている。

 ――だが違うのだ。ロイドは真のラスボスではない。
 なぜなら、ロイドはゲーム後半でアレクに殺されてしまうキャラだからだ。

 俺が取り戻した前世の記憶――その中で、妹はこう言っていた。


『嘘ッ! 嘘嘘嘘! 有り得ない! ロイド、刺されて死んじゃったんだけど! お気に入りだったのに!』――と。

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