転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
「ハッ……!? はあああああああ!?」
一瞬の沈黙の後、俺は堪らず絶叫した。
「――お、まっ、セシル! 何やってんだよ!? 今すぐリリアーナから離れろ! 俺はまだお前にそこまで許してねーぞッ!!」
俺はセシルに抗議する。
が、リリアーナを抱きしめたまま、セシルは白々しい笑みを浮かべた。
「許しも何も、これは僕とリリアーナの問題だ。それに僕は、リリアーナの気持ちを無視してこんなことはしないよ。――ね? リリアーナ」
セシルのダメ押しに、ぶわっと耳まで赤くするリリアーナ。
その姿に、俺はショックで今にも倒れそうになる。
「リ……リリアーナ……お前まさか……セシルと……つ、付き……付き合っ……」
――気付いていなかったと言えば嘘になる。
二人のデートを尾行して、相思相愛なのだろうとは思っていた。好き同士なのだとはわかっていた。
だがこの短期間で……まさか本当に?
もしかしなくても、俺がいなかった一週間の間に二人は愛を育んでいたのか? つまりはそういうことなのか……?
茫然とする俺に、リリアーナは真っ赤な顔で俯いて……。
その表情は……紛れもなく……。
「う…………嘘だろ。……誰か、誰か嘘だと言ってくれ……」
俺はユリシーズに助けを求める。
が、あっさりと首を振られて……。
今度はグレンに訴えるが、「諦めろ」と視線を逸らされて――。
◇
――結局俺はその後、リリアーナの「わたし、お兄さまのこと心から愛しております。でも、セシル様のことも(以下略)」という慰めの言葉にとどめを刺され、再起不能なまま王都への帰路に着いたのだった。
《Fin》