転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
(ユリシーズは凄いな。俺よりよっぽどリリアーナを理解してるみたいだ)
というより、ユリシーズは昔から人付き合い全般――特に女性の扱いが上手いような気がする。
生まれも育ちも由緒正しき伯爵家。
その三男ともなれば、親や兄たちから女性の扱い方を自然と学ぶものだろうか。
ちなみに俺アレクも伯爵家の生まれだが、記憶の中のアレクはユリシーズのように穏やかで人当たりのいいタイプではない。
どちらかと言えば無愛想で口数が少なく、いざというときは頼りになるが、どこか気取った一匹狼タイプだった。今の俺とはまるで別人だ。
それでもリリアーナは、俺を兄と慕い続けてくれる。それは、いったいどんな気持ちで……。
そんなことを考えていると、ユリシーズに小声で問いかけられた。
「ところでアレク、本当にここで待つ気? どうせ中には入れてもらえないよ?」
「わかってる。中に入ろうなんてこれっぽっちも思ってない。でもリリアーナが世話になるんだ。せめて挨拶くらいしないとだろ」
「挨拶? 誰に? まさか聖下じゃないよね?」
「違う、迎えの神官だよ。ここまで来てくれるって話だったろ?」
「ああ、そうだよね。でも本当に気を付けてよ。その橋は神殿の所有物。もし一歩でも超えようものなら、すぐさま門番が斬りかかってくると思うから」
「……そういうこと言うなよ。怖いだろ」
確かに先ほどからずっと、長い槍を持った門番二人に睨みつけられているが……。
(こいつが言うと、冗談に聞こえないんだよな……)
――と、そのときだ。
約束の時間より十分早く、橋の向こうの門が開き、一人の神官が現れた。
くるぶしまで隠れる黒いローブのような服と、短い烏帽子のような帽子を被り眼鏡をかけた、二十歳そこそこの生真面目そうな神官だ。