転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
4.青薔薇のプリンスと紅蓮の聖騎士
(リリアーナの奴、いったいどこに行ったんだ?)
俺は迷子のリリアーナを探すため、元来た方へと引き返していた。
けれどなかなか見つからず、次第に焦りを感じ始める。
――この神殿は屋内外の境目がほとんどない。
例えるならば、平安貴族が住んでいた寝殿造の西洋版といったところか。
聖堂や教会堂、礼拝堂などの建物を、何本もの回廊で繋げた造りをしている。
そんな造りにした理由はおそらく、敷地内に流れる何本もの細い川と、その間に点在するいくつもの池のためだろう。
女神の力が宿る聖なる水の流れを人為的に変えてはならないという、信仰心の現れだ。
そういうわけでこの神殿――少なくとも、俺のいる入口付近はかなり見通しがいい。
回廊からは景色が見渡せるし、敷地のほとんどは水辺。視界を遮るものは殆どないからだ。
そのため俺は、リリアーナを見つけるのは簡単だと思っていたのだが……。
(あいつ……もしかして別の道を行ったのか……?)
リリアーナのことだ。あり得なくはない。
俺は立ち止まり、今一度記憶を整理してみる。
(考えろ。リリアーナが興味を持ちそうなものが、きっとどこかにあったはずだ)
そう考えてひらめいた。
そう言えば、今しがた通り過ぎた場所に下り階段があったはず。
その先はかなり広い中庭になっていて、咲き乱れる花や草木でこちらから死角になっていた。
――間違いない。リリアーナはそこにいる。
そう確信した俺は、来た道を逆戻りした。
そして無事、リリアーナの姿を発見したまでは良かったのだが――。