転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
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前世の記憶を思い出して早ひと月、俺はこの世界をずっと舐めて見ていた。
やれ乙女ゲームだ、攻略対象者だ……そんな風に思っていた。
だが、そんな甘い考えは今日で終わりにする。
セシルも、サミュエルも、そしてグレンも、ルーファスも……まだ出会っていない多くの人たちも、ただのキャラクターではない。精一杯、自分の使命を果たそうと生きている人間だ。
そんな人たちに、俺も誠実に向き合いたい。セシルのようにはなれなくても、俺には俺のできることがあるはずだ。
そしてその先にあるはずの、この世界をハッピーエンドを一緒に見てみたい。
俺がラスボスにならないってだけではなく、一人一人の幸福な未来のために、俺も力を尽くしたい。
◇
こうして俺たちは、たった二日の準備期間を経て現地に旅立つこととなった。
大神官サミュエルの無謀な計画と、付け焼き刃な力を携えて――俺たちはたった五人で、王都を後にしたのだった。