転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜

9.リリアーナの恋の始まり

 翌日の午後、俺たちはノーザンバリーに辿り着いた。
 この国の最北端、北の国境を守る城塞都市である。

 大きさは四大都市に遠く及ばないが、国境を守る役割があるだけあってそれなりに大きな街だ。
 国で三番目に大きな駐屯地があり、実際、この国の兵力の三割はこの場所に置かれている。軍事的に非常に重要な場所である。

 と言っても、実は国境はここにはない。国境は情勢によって(つまり戦争の勝敗によって)刻々と変化するためだ。

 我が国の国境線は今、先の戦争で北の国からふんだくった領土(主に鉱山)の向こう側、ここから更に一日北へ進んだところにある。

 ――なお、俺たちの最終目的地は国境線ギリギリの森だ。
 つまりまだ一日移動しなければならないが、この先は補給地がないため拠点はこの街に置くことになる。


 そんなノーザンバリーの中心街で、俺たち五人は遅めの昼食を取っていた。

 商隊に紹介してもらった宿屋の一階にある、食堂のテラス席。
 五人座ると腕がぶつかりあいそうなサイズの丸テーブルを囲み、大皿に乗った庶民料理をシェアして食べる。

 ちなみにメニューは主に麺と揚げ物。トマトパスタとフィッシュアンドチップス的なやつで、まぁまぁ美味い。

 ローズベリー伯爵家で出されていたお高いフレンチっぽい料理も美味しかったけれど、正直俺にはこういう庶民料理の方が合っている気がする。――そろそろ味噌と醤油が恋しくなってきた感はあるけれど。


「――にしても、驚いたな。城塞都市っていうからどんないかつい場所かと思ったら、全然普通の街だし。人も多いし」

 俺は左手でフライドポテトを食べながら街の様子を眺める。
 石造りの家々に、石畳で整地された道。水路が一つも見当たらないことを除けば、王都や四大都市とさほど景色は変わらない。

 道行く人々も笑顔で活気があるし、まるで瘴気の脅威が迫っているなどとは思わせない暮らしぶりだ。

 ――そんな街の様子を不思議に思っていると、ユリシーズが丁寧に教えてくれる。
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