転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜


「……アレク? まさか、泣いてるの……?」


 ああ――そういえば前世でもそうだった。

 四つ歳の離れた妹。
 生まれたばかりのときは得体が知れなくて怖かったけど、歩くようになったらどこにでもついてきて。「にー」とか言って俺を呼ぶとことか、めちゃくちゃ可愛くて。
 成長しても何だかんだ慕ってくれて、俺が彼女を家に連れてくると品定めするような目で見てきて……そういうところも可愛くて。

「お前生意気だぞ」って言ったら、「おにぃこそ、変な女と結婚しないでよね。私のおねーちゃんになる人なんだから」なんて言って……。
 いや、流石に美化しすぎたか。実際は、「あの女ヤッバ。猫被りすぎ」とかだったかもしれない。

 とにかく、妹が家に彼氏を連れてきたときはショックで失神しかけた。
 リビングでくつろいでる二人の様子を見ようと一階に降りたら、「部屋から出てこないで」と冷たく言われ……。いや、だったら家に連れてくんなよと言い返して……。
 そしたら、妹の彼氏がこう言ったんだ。

「お兄さんもこっちにきて話しませんか? 俺、野球部なんです。甲子園の話とか、良かったら聞かせてください」って。

 ――そう。いい奴だったんだよ。
 今のセシルみたいに、すごくいい奴だったんだ。こいつならいいかなって、仕方ないかって、そう思わせるような男だった。

 俺が事故で死んだ日も、妹はデートに出掛けて行って。
 そしたら、妹がスマホを忘れていったことに気付いて、急いでそれを届けに走って。
 横断歩道を渡りかけている妹を呼んだら、妹は立ち止まって――そしたら――そこにトラックが……。
< 45 / 148 >

この作品をシェア

pagetop