転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
そうか。それでリリアーナはああいう反応をしたのか。
そりゃあセシルみたいな王子サマに告白されたら、誰だってああなるよな……。
ユリシーズの話を聞いて妙に納得した俺は、口の中に氷を放り込む。
何の変哲もない氷だが、モヤモヤした気持ちが収まっていくような気がした。
――正直、俺はまだ納得できたわけじゃない。リリアーナを完全には手放せない。……でも、セシルならリリアーナを守ってくれる。それだけは、きっと確かだ。
そんな風に、自分の心に区切りをつける。――氷が解けきるまでの時間をかけて。
しばらくして口の中の氷がすっかりなくなると、俺はその場に立ち上がった。
「ありがとな、ユリシーズ。お前のおかげでなんか吹っ切れた」
「そう? 気分も平気?」
「ああ、もう大丈夫だ。――それより、色々考えたら腹が減ったな。露店で何か買わないか?」
「えっ、さっき食べたばかりなのに?」
「ああ。この国って魚がメインだろ? さっきも魚だったし。でもそろそろ肉が食べたくなってきたっていうか。さっき通った場所に、肉が売ってたような気がしたんだよな」
「……確かに北側は海が遠いから、肉料理も多いけど」
「じゃ、決まりな!」
――こうして、俺たちは露店を巡りながら宿に戻ることにした。
が、この選択が後々になって俺をピンチに陥れることを、このときの俺はまだ知らない。