転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
――ああ。やはりこの問いは、王太子に向けるにはあまりに無礼なものだったということか。
だが、俺だって簡単に引き下がるわけにはいかない。
「確かにそうだ。実際あいつは頭が良くて、俺の知りたいことは全部知ってる。でも、あいつは俺に気を遣うから。俺の負担にならないように線引きして、それ以上は話してくれない。だからセシルに頼んでる」
「…………」
「それに俺は、もうこれ以上ユリシーズを失望させたくない。あいつをがっかりさせたくないんだよ」
そうだ。俺はユリシーズにがっかりされたくないんだ。こんなことも知らないのかと、そう思われたくない。
ユリシーズとは対等な関係でいたいんだ。――だから。
「でも、セシル――お前なら、俺に遠慮なんてしないだろう? 王太子のお前なら、俺に何の気遣いもなく、ただ事実を事実として語ってくれる……そう思うから」
「…………」
「だからお願いだ、セシル」
するとセシルは俺のしつこい説得に呆れたのか、再び沈黙してしまった。
けれどしばらくして、諦めたように息を吐く。――そして、頷いた。
「わかったよ。そこまで言うなら」
「――!」
「ただ、最初に断っておくが僕はあまり説明するのが得意じゃない。それにかなり主観的な意見になると思う。それでも構わないか?」
「ああ、もちろんだ。恩に着る、セシル」
「うん。じゃあさっそくだが、まずは……そうだな。瘴気がどう人体に影響を及ぼすのかについて――」
――こうして俺は、セシルから話を聞く機会を得た。