転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
ああ――そうだ。
昨夜、確かセシルはこんなことを言っていた。
”辺境伯に僕らの居場所を教えたのは父上でまず間違いないだろう。そうでなければ、辺境伯ごときが王子である僕を呼び出すことなどできやしない。大方、『愚息を使ってやってくれ』とでも伝えたのだろうな。ユリシーズを君たちの同行者として認めたのも、彼がノーザンバリー辺境伯の甥だったからだろう”
そして、その意味をよく理解できない俺に、こう続けた。
”わからないか? 父上は僕ら……つまりリリアーナを使って辺境伯に恩を売るつもりなんだ。父上は神殿の衰退を望んでいる。リリアーナの功績を、神殿ではなく自分のものにするつもりなのだろう。そんなことをしたって、何の意味もないというのに――”と。
――セシルとサミュエルの会話を聞いたときから違和感は覚えていた。
そしてその違和感は、昨夜のセシルの話を聞いて大きくなり、今、確信となった。
(セシルは、国王のことを少なからず嫌悪している)
だから何だというわけではない。
だが、もし昨夜セシルに教えを請わなければ、俺はこの事実に気付くことはなかっただろう。
サミュエルと国王の間の浅からぬ溝にも、きっと気付くことができなかった。
つまり、これは布石だ。
俺がラスボスにならないための、布石。
どんな小さな情報も見逃さないようにする。それが俺の――この世界のハッピーエンドに繋がるはずだ。
俺は――そう信じてる。
◇
こうして俺たちは鉱山瘴気についての詳細な説明を受け、その場にいたマリア上級神官と数名の魔法騎士らの案内の元、現地へ移動することになったのだった。