転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜

14.光魔法と神聖魔法

 俺がマリア上級神官に真っ先に抱いた感情は、"とっつきにくそうな人"だった。

 藍色のストレートロングに、同じ色の瞳。年齢は俺より少し年上なくらいだろうが、どこか達観したような大人びた顔立ち。
 体型は一見細見と見せかけて出るところは出ているかなり魅惑的な色白美人女性――なのだが、表情筋がないのではというほど無表情なのだ。

 彼女はセシルが挨拶をしてもニコリともせず、おまけに自己紹介も「マリアとお呼びください」の一言のみだった。
 そのせいで、馬車の中はしばらくの間、しんと静まり返っていた。

 ――が、馬車が街を出たところで、セシルが懐から一通の手紙を取り出す。

「マリア、これを。聖下から君に」

 すると一瞬、マリアの顔が驚いたように見えた。
 マリアはセシルから手紙を受け取り、封を開ける。
 けれど、中に入っていたのは文字一つ書かれていない真っ白な紙だった。

(何だ、これ。真っ白じゃねぇか。っていうかセシル、サミュエルから手紙預かってたのかよ)

 だが、俺がそう思ったのも束の間、マリアが手にした手紙に段々と文字が浮かび上がってくる。
 それはまるで魔法のように……。

 いや、実際それは魔法だった。
 が、マリアは慣れているのか少しも驚くことなく、俺たち五人が見守る中、無表情のまま文字を目で追い――そして、怪訝そうに眉をひそめた。

「……聖下ったら……また……」

 その表情は半分怒り、残り半分は諦め――だろうか。
 
 いったい何が書かれているのか気になった俺は、いけないことだと思いつつも手紙を横目で除き見る。
 すると、気になる一文が目に入った。

『――というわけだから、あとはお前に任せる。頼んだぞ、マリア』――と。

(――っ! 何だこれ、ほぼ丸投げじゃねーか!)

 一応俺たちも、サミュエルから北の国境の瘴気浄化の作戦内容は聞いている。
 が、この手紙を見るに、その作戦に必要な人員はマリアが現地調達することになっているようだ。
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