転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
(流石にこれは酷すぎるだろ)
俺はそう思ったが、マリアは不満を口にすることはなかった。
彼女は「わかりました。人員はこちらで手配します」と静かな声で言い、手紙を懐にしまいこむ。
そしてこう続けた。
「皆さまが神殿側の人間だということは理解しました。瘴気浄化のご協力、感謝します」と。
そう言った彼女の表情は、先ほどに比べ幾分か柔らかだった。
どうやら彼女は、俺たちが王宮側の人間だと思って警戒していたらしい。
俺は逆に彼女の方こそ王宮側の神官なのかと思っていたが、俺の方こそ失礼な考えだった。
改めて頭を下げるマリアに、セシルは微笑む。
「顔を上げて、マリア。僕の方こそ君たち神官に謝らればならない立場だ。神殿にばかり負担を強いて本当にすまないと思っている。北の国境の瘴気についても、今回の鉱山についても……。一刻も早い解決を望むよ。だからどうか、最後まで君たちの力を貸してほしい」
「……殿下、そのような……もったいないお言葉にございます」
――こうしてマリアは、改めて俺たちに鉱山の現状について説明をしてくれた。
まず一つ目に、鉱山は今、マリアの作った光の結界によって外界と遮断されていること。
だが結界はあくまで瘴気を閉じ込めておくためのもので、それ自体に瘴気を浄化する力はないこと。
また、結界の維持には多大な魔力を要する上、現在ここにはマリアと他に一人しか神官がいないため、魔力切れにより結界が壊れるのは時間の問題だということだった。