転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
ああ、間違いない。
彼女が探しているのは問題児の神官だろう。
マリアは怒り心頭の様子で、結界に綻びがないか入念にチェックする。
そして結界が無事であることを確認すると、安堵の溜め息をついた。
――にしても、この状況で持ち場を離れる神官とは異論なしの問題児だ。
もしこの結界が壊れて瘴気が漏れ出しでもしたらどうするつもりなのか。
「殿下、申し訳ありません。私の部下が行方をくらましたようで……ですが、今のところ結界に問題はありません。どうかご安心を」
マリアはそう言って、右手に持つ――彼女の身長よりも長い――杖の先を結界へ向けた。
そして、俺たち全員に向かって告げる。
「今からここに入口を開けます。皆さまは先ほど馬車で説明した通り、中に入って瘴気の浄化と魔物の討伐を――。魔物はコウモリやネズミ、巨大化した昆虫類の類がいると予想されます。くれぐれもお気を付けを。……それと、逃げ切れなかった者たちの遺体もそのまま放置されていると思いますが、決してお手を触れませんように」
――マリアの最後の言葉を聞いて、俺たちの間に動揺が走る。
が、確かに、言われてみれば当然だ。
皆、自分が逃げるので精いっぱいだっただろうから。
セシルが俺たちの顔を見回し、号令をかける。
「行くぞ、皆!」
――その声を合図に、マリアが結界に入口を開ける。
こうして俺たちは、結界内――瘴気の充満する鉱山へと足を踏み入れた。