転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
16.戦線離脱
(……あれ……、ここ……どこだ……?)
瞼を開けると、そこは見覚えのない場所だった。
薄暗く閉鎖的な空間に、汗と土と金属を混ぜ合わせたような独特な匂い。
空気は埃っぽくて、息をする度にむせ返りそうになる。
そんな場所に、俺は仰向けの状態で倒れていた。
(なんだよこれ……今、どういう状況だ……?)
身体中が痛い。
特に酷いのは後頭部で、まるでデッドボールを受けた直後のようにガンガンする。
いったい何が起きたのか。どうして俺はこんな場所で倒れているのだろうか。
ぼんやりとした意識の中で、俺はどうにか記憶を手繰り寄せる。
すると…………。
「――ッ!」
次の瞬間、前世の記憶ごと全てを思い出した俺は、文字通り飛び起きた。
そして愕然とした。
目の前にそびえ立つ、高い高い瓦礫の壁の存在に。
奥へ繋がる唯一の道が、塞がれてしまったその事実に――俺は自分が、シナリオの外側へはじき出されたことを理解した。
「嘘だろ。こんなことって……」
俺はただ茫然とする。
こんなことが有り得るのか、と。
ついさっきまで一緒にいたのに、こうもあっさり三人と引き離される――そんな偶然が有り得るものなのかと。
(まさか……これがゲームの強制力だなんて、言わないよな?)
だが、どうしても否定できない自分がいる。
なぜならば、俺の知っているシナリオで坑道に閉じ込められるのは、リリアーナとセシル、そしてグレンの三人だけ。
それが今、目の前で現実のものとなったのだから。