転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
17.人喰い大蛇
俺は眠っているユリシーズを背負い、出口へと引き返した。
けれどところどころ壁が崩れてしまっているせいで、灯りのほとんどが消えてしまっている。
行きにグレンから渡されたランプはあるが、せいぜい五、六メートル先が見える程度で、どうしても距離感覚が掴みづらい。
自分がどこを歩いているのか、わからなくなってしまいそうだった。
(落ち着け……。大丈夫だ、行きはほぼ一本道だった。途中何度か脇道はあったが、どれも先は行き止まりの細道。まず迷うことはない。それに、俺は一度ここの地図を覚えたんだ)
昨夜グレンに叩き込まれた鉱山の地形と坑道の地図。
俺はそれを必死に脳内に思い描く。
見るのと実際とでは全然違うが、それでも、知っているか知らないかでは大きな違いがある――それは、多少なりともアドバンテージになるはずだ。
(……大丈夫、大丈夫だ)
俺は五感を研ぎ澄ませながら、慎重に、だが確実に足を進めた。
けれど五分ほど歩いたところで、急に息が上がってくる。
(……くっそ。想像以上に傾斜がキツい。行きは緩やかな下り坂だと思ったのに)
大人一人を背負っているのだから当然とも言えるが、予想より足への負担が大きい。
重力が――強い。――身体が、重い。
「……っ」
更に悪いことに、さっきから右足がズキズキと疼《うず》くのだ。
崩落現場で倒れたときに捻《ひね》ったのだろう。捻挫とまではいかないが、右足を踏み出すたびに鈍い痛みに襲われる。
(この痛み……懐かしいな。……中学以来か)