転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜

18.少年神官ロイド

 俺は一気に間合いを詰める。

 するとそれに反応して、蛇は顎を大きく開き、牙を剥きだしにして、俺に襲い掛かってきた。


(ああ……怖いな)


 あの牙に触れたら間違いなく致命傷だ。
 それどころか丸呑みにされる可能性だってある。

 だが、怖がっていたら勝てるものも勝てなくなる。気持ちで負けたら終わりなのだ。

(集中しろ……大丈夫、俺には見えてる)

 迫りくる大蛇。巨大な口。――だが。


「――遅い」


 牙が肩を掠める寸前、俺は姿勢をかがめて蛇の頭の下に潜り込む。
 狙うは首だ。俺は横一文字に剣を振り抜いた。

 ――だが、硬い。
 分厚い(うろこ)のせいで、聖剣は大きく弾かれる。


「ハッ、マジかよ……!」

(聖剣弾くとか、なんつー身体してんだ……!)


 そう思うと同時に、再び俺に喰い付こうとする巨大な蛇。
 俺はその攻撃をギリギリのところで避け、反対側に回り込んだ。

 横に斬るのが駄目なら縦か、あるいは……そう考えた俺は、()(こう)斬りと突きを繰り出してみる。
 だが先ほど同様に鱗が邪魔をして、大したダメージを与えるには至らなかった。


(鱗、やっかいだな。それに……やっぱり、この聖剣……)

 ――前回より、威力が落ちてる……?


 確証はない。けれど、斬り込んだときの感触が、手ごたえが、前回に比べ弱いような気がするのだ。

(……だとしたら、かなりマズいな) 

 幸い、蛇の動きはそれほど早くない。
 食事の後だからなのかもしれないが、一昨日のグレイウルフの方が三倍は素早い動きをしていた。
 だから、かわすだけなら難しくない。

 けれど持久戦に持っていかれるとこちらが不利になる。
 聖剣の威力のこともそうだが、いつ俺の右足が動かなくなるかわからないからだ。

 とはいえ、やみくもに攻撃しても体力を消耗するだけなのもまた事実。
 俺は一旦、攻撃を最小限の動きで防ぐことに専念しつつ、対策を考える。
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