転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
「お前、ロイドか?」
マリアが話していた、問題児の神官ロイド。
ここには神官は二人しかいないはずだから、こいつが神官だと言うならロイドである可能性が高い。
俺の問いに、そいつは笑みを深くする。
「そうだよ、僕はロイド。見ての通り神官だ。お兄さんは?」
「……アレクだ。アレク・ローズベリー」
「アレク……。ああ、聖女さまのお兄さんだ!」
パアッと顔を明るくするロイドは、まるで神官には見えなくて……俺は、どう反応すればいいかわからなくなった。
困惑する俺に、小さく首を傾げるロイド。
「ねえ、アレク。向こうの死にそうなお兄さんは、君の仲間?」――と。
「――ッ」
その言葉に、俺は再び我に返った。
急いで聖剣を回収し、ユリシーズの元へ戻る。
(……大丈夫だ。状態は安定してる)
だが、急いでマリアのところへ連れて行かなければ。――そう思って気が付いた。
神官なら、ここにいるではないか、と。
「なあ、ロイド!」
ロイドは何だか得体の知れない神官だが、背に腹は代えられない。
俺はロイドにお願いする。「ユリシーズの傷を治してくれないか」と。
だが、ロイドは首を横に振った。
「ごめんね。僕、治癒魔法は使えないんだ。だから治せない」
「使えない? でも神官だろ……!?」
俺が語気を強めると、ロイドは困ったように眉を下げる。
「知らないの? 光魔法師で治癒魔法が使える神官は二割もいないよ。僕は自分の傷くらいなら治せるけど、人のは無理。前に猫の傷を治そうとしたら、うっかり殺しちゃったことがあって。それ以来、使用を禁止されてるんだ」
「……っ」
(うっかり……殺した?)