転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜

19.リリアーナのトラウマ


 その後、俺たちは魔物と遭遇することなく無事に坑道を出ることができた。
 あとは平地を五十メートルほど進めば、結界の外に出られる。

 俺は右足の痛みに耐えながら、俺の二歩先を鼻歌を歌いながら歩くロイドの背中を追った。


 ――ところで、俺にはどうしても気になることがあった。

 まず、どうしてロイドは坑道の中にいたのかということ。
 もう一つは、坑道の出口までにいくつも転がっていた、俺が倒したのと同じ蛇の魔物の死骸――それを倒したのが、ロイドなのかということだ。

 閉鎖的な坑道内では何だか聞きづらかったが、結界出口まであと少しの今なら、聞ける気がする。


「なあ、ロイド」
「なぁに?」
「お前、どうして結界の中にいたんだ? マリアに見張りを頼まれていたんじゃなかったのか?」
 
 俺がそう尋ねると、ロイドは「あー」と少し考えて、にこりと微笑んだ。
「だって、見張りなんてつまんないでしょ?」――と。

 その想像の斜め上をいく理由に、俺は面食らう。

「つまらない? そんな理由で、お前は持ち場を離れたのか?」
「そんな理由? 僕にとっては大事なことだよ」
「……じゃあ、結界内で何をしてたんだよ? 浄化か?」
「浄化? うーん。実は僕、浄化も好きじゃないんだよね。地味だし、退屈だし」
「…………」

 もはやどこから突っ込めばいいのかわからない。

 結界内で浄化をしないというなら、いったい他に何をするというのか。――散歩か? それとも魔物退治? だが、確か神官は攻撃魔法を禁止されているんじゃなかったか?

 俺がそんなことを考えていると、やはり顔に出てしまったのか、ロイドは不満げな顔で俺を流し見る。

「どうせ"神官らしくない"って思ってるんでしょ」
「……あ……いや……そんなことは」
「誤魔化さなくていいよ。そんなこと、僕が一番よくわかってるし」

 そう言って、今度はニコリと微笑むロイドに、俺はつい聞いてしまう。

「なら、何で神官なんてやってるんだよ」
< 90 / 148 >

この作品をシェア

pagetop