転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
それは単純な疑問だった。
この世界では光魔法師のほとんどは神官になるけれど、決して強制ではない。
なのに、ロイドはこの若さで神官だ。
俺は以前ユリシーズから、神官になるまでの過程を教わった。
まず最初は見習いから。
神殿には神官育成のための神学校というものがあり、そこに合格する必要がある。
試験は七歳から十二歳までなら貴族平民関係なく何度でも受けられるが、魔力は身体の成長と共に増加するため、実際に合格できる子供の九割は十歳以上だ。
合格すれば見習い神官と認められ、神学校で六年を過ごす。
だが、それが終われば晴れて初級神官――とはならず、初級神官になるための試験をクリアしなければならない。
落ちれば見習い継続である。
また当然のことながら、初級から中級、中級から上級へ上がるためにも試験を受ける必要がある。
試験は年に一度だけ。評価方法は相対評価ではなく絶対評価だから、上級昇格試験ともなれば何年も合格者ゼロ、ということも珍しくない。
つまり、ロイドの年齢で神官になるというのは非常に珍しいことなのだ。
十二か十三そこらで神官になろうと思ったら、七歳か八歳で神学校に合格し、殆どストレートで初級神官の試験に合格しなければならない――それは、超優秀であるという証拠で。
そんな奴が問題児とは、いったいどういうことなのか。
ロイドを見つめると、俺を嘲笑うかのように、ニヤリと歪むロイドの唇。
「僕、好きなんだ。魔物退治」
「……は? 好き? 魔物退治が?」
「うん、大好き。だって、魔物だったらどれだけ殺しても怒られないもん」
「……ッ」
瞬間、俺は戦慄する。と同時に理解した。
さっき俺が蛇の魔物を倒したとき、ロイドが放った「残念」の本当の意味を。
こいつは俺を助けたかったんじゃない。魔物を自分の手で殺せなかったことに対し、残念だと言ったのだ。
(可愛い顔して、とんでもないな……こいつ)