転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
しかも今こいつは、"魔物だったら殺しても怒られない"と言った。
逆に言えば、“怒られないなら魔物以外も殺す”という意味に聞こえる。
(絶対、敵に回したら駄目な奴……)
これ以上聞くと自分の命が危ない気がする。――俺は残りの疑問を全て呑み込み、平静を装った。
が、ロイドは勝手に話を続ける。
「あっ、でも、今の話はマリアには内緒だよ? マリアはとっても信仰心が厚いから」
「…………」
「それと、僕が倒した魔物、君のその聖剣で倒したってことにしてくれると嬉しいな。僕、あのときちょっと急いでて。つい攻撃魔法使っちゃったんだよね。マリアにバレたら殺されちゃう」
「…………」
確かに、ロイドの倒した魔物には全て貫通した傷跡があったが……。
「急いでたって……どうしてだ?」
何も聞かないつもりだったのに、つい口にしてしまう。
禁止されている攻撃魔法を使ってしまうくらいに、急いでいた理由は何なのか、と。
すると、ロイドは残念そうに溜め息をついた。
「地下からすっごく大きな魔物の気配がしたんだ。僕が戦ったのより数倍大きい奴。――でも君たちがいたから。聖女さまが来てるなら、僕の出番はないなって。それに、流石に戻らないとマリアに怒られる」
「……地下に、大きな魔物?」
「そうだよ。さっきの揺れで目が覚めたんだろうね。獲物を探して地下を這い回ってる」
「……ッ」
――瞬間、俺の背筋が凍り付く。
どうしてかはわからない。けれど、とても嫌な予感がした。
「その魔物って……蛇、だよな……?」
「……? そうだけど?」
そうだ。地下にいるのは、俺が戦ったのより何倍もでかい大蛇。
妹のゲームに付き合って一緒に倒した、最初のボス。
とはいえ、難易度的には難しくなかった。セシルとグレンなら、問題なく倒せるレベルの魔物。
(――なのに、どうしてこんなに胸騒ぎがするんだ……?)