転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
「俺…………ほんと…………何やってんだ……」
セシルとグレンは、きっと難なく魔物を倒すだろう。
あの二人にはその力がある。だから、リリアーナの命が本当の意味で危なくなることはない。
でも、それでも、俺はリリアーナに怖い思いをさせたくないんだ。
たとえこれが不可抗力でも、俺のせいではなかったとしても、俺は、リリアーナには泣いてほしくない。辛い思いをしてほしくない。
そのためなら何だってする。
どれだけ無様だろうが、俺は、リリアーナのところに辿り着いてみせる。
歩けなくても、立てなくても……地べたに這いつくばってでも……必ず。
――すると、そんなときだった。
地面に額を擦りつける俺の頭上から、無邪気な声が聞こえてきたのは――。
「あーあ。だから言ったのに。右足、壊れちゃったんでしょ?」
「……ロイド」
それはロイドの声だった。
ロイドは俺の足元にしゃがみ込み、右足に触れる。
「わぁ、凄い腫れてるよ。痛くないの? よくここまで我慢したね」
「……何でお前がここにいるんだよ。結界の外に出たんじゃなかったのか」
「んー、出るつもりだったけど、気が変わったんだ。マリアに食って掛かる君を見てたら、何だかまた面白いものが見れそうだなって思って。――実際、追いかけてみたら君、こんなところで倒れてるし」
そう言って、ロイドはクスクスと笑う。
その場違いな態度の軽さに、俺は頭の熱がスッと冷めるのを感じた。
全身に入っていた力が抜けていく。不思議と、思考がクリアになっていく。
「それで、君はこれからどうするの? 僕が手伝ってあげようか?」
俺の顔を覗き込み、ニコリと微笑むロイド。
その笑顔は、天使というよりは悪魔的で――。
だが、他に方法がない俺は、迷うことなく答えた。
「頼む、ロイド。俺を貨物用エレベーターまで連れていってくれ。俺は地下に降りなきゃならない」
すると、ロイドは笑みを深くする。
「うん、いいよ」
こうして俺はロイドに背負われ、貨物用エレベーターへと向かった。