転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜

 ◇


「大丈夫だ、(かご)は落ちてない、使える……!」

 俺は貨物用エレベーターの荷台の状態を確認し、声を上げた。
 すると、水車の方からロイドもこちらに向かって叫ぶ。

「水路も水車も無事だよ! 繋ぎも大丈夫そう!」
「そうか! 良かった!」

 もしかしたら、さっきの揺れで荷台が脱落している可能性もあった。
 水車の方も、水路に亀裂が入り使えないことも有り得た。

 だが、実際はどちらも無事。これなら地下に降りられる。

 なお、貨物用エレベーターだからだろうか。エレベーター内側に操作盤はなく、操作はエレベーター外側にあるレバーで行うようだ。
 レバーは自動車のシフトレバーのようになっていて、一階から地下五階まで切り替えられるようになっている。

「よし、俺はエレベーターに乗るから、ロイドはレバーを操作してほしい」

 俺はロイドに指示をする。――が、ロイドは頷かない。

「え、何言ってるの? 僕も一緒に降りるに決まってるでしょ」
「いや、でもな、操作は外側からしかできないんだ。一人はここに残らないといけないだろ」
「えー、そんなのやだよ。僕も一緒に行く。そもそも、ろくに歩けもしない君が一人で降りたところで、魔物に食べられて死んじゃうだけだよ?」

 ロイドは続ける。

「っていうかこのエレベーター、籠自体には屋根がないし、レバーを操作してからでも十分飛び乗れると思う」
「……!」

 ――確かに、その手があった!

 俺はロイドの意見に賛同し、エレベーターに乗り込んだ。
< 97 / 148 >

この作品をシェア

pagetop