転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜
◇
「大丈夫だ、籠は落ちてない、使える……!」
俺は貨物用エレベーターの荷台の状態を確認し、声を上げた。
すると、水車の方からロイドもこちらに向かって叫ぶ。
「水路も水車も無事だよ! 繋ぎも大丈夫そう!」
「そうか! 良かった!」
もしかしたら、さっきの揺れで荷台が脱落している可能性もあった。
水車の方も、水路に亀裂が入り使えないことも有り得た。
だが、実際はどちらも無事。これなら地下に降りられる。
なお、貨物用エレベーターだからだろうか。エレベーター内側に操作盤はなく、操作はエレベーター外側にあるレバーで行うようだ。
レバーは自動車のシフトレバーのようになっていて、一階から地下五階まで切り替えられるようになっている。
「よし、俺はエレベーターに乗るから、ロイドはレバーを操作してほしい」
俺はロイドに指示をする。――が、ロイドは頷かない。
「え、何言ってるの? 僕も一緒に降りるに決まってるでしょ」
「いや、でもな、操作は外側からしかできないんだ。一人はここに残らないといけないだろ」
「えー、そんなのやだよ。僕も一緒に行く。そもそも、ろくに歩けもしない君が一人で降りたところで、魔物に食べられて死んじゃうだけだよ?」
ロイドは続ける。
「っていうかこのエレベーター、籠自体には屋根がないし、レバーを操作してからでも十分飛び乗れると思う」
「……!」
――確かに、その手があった!
俺はロイドの意見に賛同し、エレベーターに乗り込んだ。