私が梅雨を好きな理由
「心ちゃん。いい加減、自分でやんなよ」
そう言いながら、慣れた手つきで私のパヤパヤした髪の毛にアイロンを通す幼馴染の蓮。
「やだよ。自分じゃむりだもん」
両親ともに美容師で、まだ高校生だけどその血を脈々と受け継いでいる蓮。
雨が降るとまとまらない私の髪の毛をいつもキレイに整えてくれる。
店舗兼住宅の蓮の実家はオシャレな美容院で、開店前のこの時間はまだお母さんもお父さんもお店には居ない。
いわゆる貸し切り状態で、同じ高校の制服姿の蓮と私がまるでごっこ遊びでもしているかのようにセットチェアを独占している。
雨の日の登校前は、こうやって蓮と一緒に過ごせる。
だから、私は梅雨の時期がすき。