運命の彼と極上の愛を〜夫の不倫の証拠集めの為に雇った探偵の彼は、沢山の愛で私を満たしてくれる〜
「それで、何があったの?」

 杉野さんは運転席に座ってドアを閉めるとすぐに先程の話の続きを求めてくる。

「……実は――」

 話したいけど、思い出したくない。

 そんな思いが交差する中で私は自宅で見てしまった光景を杉野さんに話した。

 すると、それを聞いた彼は、

「そっか、それは辛かったね。いくら不倫してるって分かってても、実際に現場を見るはやっぱり複雑だよな」

 そう言いながら、私の身体を抱き締めてくれた。

 フワリと爽やかな匂いの香水が香る。

 普段とは違って話やすい口調の彼。

 抱き締められた事に初めは少し驚いたけれど、貴哉と不倫相手が抱き合っていて現場を目撃してから杉野さんに会うまでの間はずっと気を張っていた事もあって彼の温もりと優しさにその緊張はほぐされていき、一度は止まった涙が溢れ、ポロポロと零れ落ちていった。

「うっ、……ひっく……」

 こうなると泣き止むどころか涙は溢れるばかり。

 惨めさと悔しさ、色々な感情が入り混じって頭の中はぐちゃぐちゃで、私は杉野さんに縋りついて泣いてしまった。

 その間中、彼は頭や背中を優しく撫でて慰めてくれた。

 こんな人が私の夫だったら、どんなに良かった事か。

 そんな有りもしない現実を夢見ながら、落ち着くまでひたすら杉野さんの優しさと温もりを感じていた。
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