運命の彼と極上の愛を〜夫の不倫の証拠集めの為に雇った探偵の彼は、沢山の愛で私を満たしてくれる〜
「……すみませんでした、もう、大丈夫です」

 あれからどれくらい経ったのか分からないくらい、私は杉野さんの腕の中で泣いてしまった。

 こんなに泣いたのは初めてなくらい、彼の温もりが安心出来たのだと思う。

「これからどうするの? 流石に今日は、帰れないんじゃない?」
「……そう、ですね……ネットカフェにでも泊まろうかなって」
「実家には頼れないの?」
「それは無理なんです、うちの両親は貴哉の事を信頼しているし、小西家との関わりを絶ちたく無いと思っているから」
「けど、不倫してる事を打ち明ければ流石に……」

 確かに、娘の旦那が不倫をしていると知ったら、娘を大切に想う両親ならば力になってくれるかもしれない。

 だけど、私の家は違う。

 そもそも貴哉との結婚だって、小西家との繋がりを持ちたいから。

 私の実家は小さな繊維工場を営んでいて、年々業績は悪化の一途を辿り、廃業に追い込まれていた。

 それもあって私の結婚相手は金銭面の援助をしてくれる家との縁談を受けると決まっていて、何人か候補がいたのは知っていたけど一番金銭面の援助額が大きかった小西家が選ばれた。

 結果、私は貴哉と結婚する事になった。

 小西家は国内外に多方面との繋がりがある大手アパレルメーカー。

 小西家と繋がる事によって仕事も斡旋して貰えるので関係を絶つ事はしたくない両親。

 私は以前、両親に貴哉が不倫をしているようだと伝えた事がある。

 けれどその話を聞いた両親は私の味方をするどころか責めたのだ。

「両親は知ってるんです、相談したら、『女の一人や二人いるくらいで騒ぐな、多少の事は目を瞑れ』と言われました。だから、頼る事は出来ない……」

 私のその言葉は意外だったみたいで、それを聞いた杉野さんは黙り込んでしまった。
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