運命の彼と極上の愛を〜夫の不倫の証拠集めの為に雇った探偵の彼は、沢山の愛で私を満たしてくれる〜
「それじゃあ私はこれで……」

 これ以上杉野さんを拘束する訳にもいかないと、車を降りようとドアに手を掛けた、その時、

「行く所がないなら、ひとまず俺の所へ来なよ」

 こちらへ近付きドアに手を掛けた私の手の上に自身の手を重ねながら、そう口にした。

「え……?」
「ネカフェなんてゆっくり出来ないし、金もかかるでしょ? わざわざ金を使う事なんて勿体無いから俺の家に来なよ」

 確かにネットカフェじゃ休まらないだろうし、何よりもお金がかかってしまう。

 実家に行く為に多少のお金を貰ってきたものの、この先何があるから分からないから手元に置いておきたいので出来れば使いたくない。

 だけど、だからといっていくら何でも杉野さんの家に行くだなんて……。

「遠慮しなくていいよ。っていうか、俺が小西さんを放っておけないんだ。だからさ、家に来てくれない?」

 放っておけないなんて、今ここでそんな台詞は狡いと思う。

 本来既婚者の私が異性の家にお邪魔するだなんてしてはいけない事なのは重々承知しているけれど、行き場が無い私にとっては有り難い申し出だった。

「……それじゃあ、その、今夜一晩だけ、お世話になります」

 少し悩んだ末、ひとまず今夜一晩だけお世話になって明日は帰る事を決めた私は、貴哉に『今晩は実家に泊まって明日の昼間には帰る』とメッセージで送った。

 駐車場を出た杉野さんは高級マンションが建ち並ぶエリアへ車を走らせていく。

 そして、その中でもひと際階数のあるマンションの前までやって来ると、その敷地内の駐車場に車を停めた。
< 16 / 50 >

この作品をシェア

pagetop