運命の彼と極上の愛を〜夫の不倫の証拠集めの為に雇った探偵の彼は、沢山の愛で私を満たしてくれる〜
 翌朝、出勤する杉野さんと共に部屋を出た私はマンションの前で彼と別れる事に。

「あの、お世話になりました」
「全然。それよりも、本当に大丈夫?」
「はい、大丈夫です。それじゃあまた」

 別れる直前まで心配してくれる彼に「大丈夫」と笑顔を見せ、駅の方へ向かって歩いて行こうとすると、

「――小西さん」

 杉野さんに呼び止められ、「これ」と言いながら何かを差し出して来た。

「これは?」
「お守り。まあ、気休め程度なんだけど……もし、どうにもならないくらいに辛い事があったら、このお守りに向かって願いを口にしてみて? それと、なるべく肌身離さず持っていて欲しいんだ」

 渡してくれたのはピンクの生地に《御守》と書かれた、何処かの神社の物なのか、それとも手作りなのか小さくて可愛いお守り袋だった。

「ありがとうございます。大切にしますね」

 きっと、願掛けか何かなのかなと思う。

 私が辛い思いをしないようにと気を遣って用意してくれたものに違いないと有り難く受け取ってその場を後にする。

 杉野さんの自宅がある場所は私の住む町から電車で四駅くらいの場所で、なるべく帰りたくなかった私は二駅分を徒歩で、残りを電車に乗って自宅を目指し、お昼前くらいに帰路についた。

 鍵を開けて中に入った瞬間、昨日の事がフラッシュバックする。

 気持ち悪さを感じた私は部屋へ入ると空気の入れ替えと思い、全ての部屋の窓を開け放つ。

 そして、荷物を置いて着替えた私は家中の掃除をし始めた。

 昨日、貴哉と不倫相手がこの部屋でしていた全ての痕跡を消したかったから――。
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