運命の彼と極上の愛を〜夫の不倫の証拠集めの為に雇った探偵の彼は、沢山の愛で私を満たしてくれる〜
 何故? と問いたい気持ちはあったけれど、今それを言ったところでどうにもならない。

 私は足早に玄関まで戻ると、すぐに杉野さんに駆け寄った。

「タクシーを待たせていますから、行きましょう」
「はい」

 杉野さんは私から鞄を受け取ると、もう片方の手で私の手を掴んで、早々に部屋を後にした。

 タクシーに乗り込んだ私たちは杉野さんのマンションへ向かう事になった。

「あの、杉野さん……どうして?」
「どうしてって、何が?」
「その、どうしてあの時、来てくれたんですか?」
「小西さんが“助けて”って祈ったから」
「え?」
「お守り、効いたでしょ?」

 確かに、彼の言う通り私はあの時願った。杉野さんを思い出しながら、助けてと。まさか本当にあのお守りがそんな効力を発揮してくれたの? なんて思っていると、

「――なんてね、そのお守りの中に、録音用の盗聴機を仕込んでいたんだよ。黙ってて悪いとは思ったけど、小西さん、痣については頑なにぶつけたって言い張るし、聞いても殴られたとは答えないと思ったから、もしもに備えて仕込んでた。裁判になれば、これも証拠になるからね」

 杉野さんは少しだけ戯けた表情を見せながら、お守りのからくりを教えてくれた。どうやら私は、杉野さんがお守りに盗聴器を仕込んでいた事によって命が助かったらしい。

「それにしても本当、酷い事するよな、アイツ。痛かったろ? もう大丈夫だからな」
「……っ、」

 ボサボサになった髪を優しく撫でながら「大丈夫」と繰り返す杉野さん。

 彼の優しさに涙腺は緩み、タクシーの運転手さんがいる前にも関わらず、私は子供のように泣き出してしまった。
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