人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。
「どう、今日は楽しかった?」
「…いいえ」
「…お?」
小さく返答すると、日比野先生は書類から目を離して私を見た。
「もう少し生きてみようと思った?」
「…いいえ」
「お」
少しだけ口角を上げながらカルテを手に取り、何かを記入した。
「まだ、生きるのを止めたいと思う?」
「…はい」
「ふーん……つまり、死にたいくらい辛いっていう解釈で良い?」
「………はい」
「…うん、少し改善だ。感情が戻って来たね」
うんうん、と頷きながら何かを記入する先生。
そんな先生のニヤッとした表情に…何故かモヤモヤっとした感情が芽生えた。
「……」
長い間忘れていた、様々な感情。
喜び、怒り、哀しみ、楽しみ。
この産業医、日比野先生が何かしてくれたとは思えないけれど。
この面接を通して、少しだけ、人間らしさを取り戻せたような気がした。