人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。
「日比野先生、もう嫌だ!! 辛いよ…死にたい!!」
いつもの14時からの面接。
システム部のオフィスを出て、面接室に来るまでは至って普通だったのに。
日比野先生の顔を見るなり、感情が急変した。
「もう嫌だ、生きたくない…辛い…!!」
「落ち着け、黒磯さん」
涙は出ないけれど、感情は抑えられない。
「もう、死にたい!」
そう叫び喚くと、日比野先生は真顔で私の肩を持ち、無理やり目を合わせた。
「もう死にたいの? そう…それは残念だね。けど、そう思うなら仕方ない」
「…………」
その一言に、ピタッと私の体が固まる。
昂っていた気持ちが徐々に沈み……次第に私は冷静さを取り戻した。
日比野先生の目を見つめて、思い切り睨みつける。
今度は…別の感情が芽生えてきた。
「え、何で睨むの。君が自分で言ったじゃない」
「……先生は、止めないんですか」
「止めないよ。僕には関係無いから」
「…………」
ふーん。そうか、止めないんだ。
じゃあ、そうしようか。
死んでみようか。
その代わり先生のこと、今世も来世もその先も、ずっと…ずっと呪ってやるから………。
「……そんなに、睨むなよ」
「…前から思っていたんですけど、先生って最低ですよね」
「お? 何だ、突然」
先生を睨んだまま…湧き出てくる言葉を素直に吐き出す。
「死にたいって思っている人の気持ち、普通肯定しますか? 本当に死んじゃいますよ」
「……は? 何だそりゃ。だって君が自分で死にたいって言ってんじゃん。その気持ちを尊重しているだけだろ。何か問題がある?」
「……」
「何? “死んだら駄目だよ…”、“人生楽しいことが待っているよ…”って、言ってほしいの? 馬鹿じゃん、そんなの。“そうよね…先生の言う通りよね…”って、なる? ならないでしょう。だから僕は言わない。死にたい君の気持ちを尊重するだけ」
「……」
日比野先生の言葉を聞いて
今度はまた別の感情が湧き上がって来た。