人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。
「ねぇ、黒磯さん、欲しい物はある?」
「……」
唐突な問いかけに、思わず先生の顔を見た。
「って、突然聞いても困るよね」
「……」
欲しい物。
……当然だが、何も思いつかない。
好きなことも無いし、やりたいことも思いつかない。
今は日比野先生が持って来てくれる小説や漫画を読んで、外を眺める毎日。
欲しい物……何も無い。
「……」
またいつものように首を傾げると、先生も首を傾げた。
「無いね」
「……」
「でもまぁ、無理して探す必要は無い。気にしないで」
そう言って先生は私の頭を撫でた。
「……」
日比野先生の手、温かい。
目を閉じて先生の腕に少しもたれかかってみる。
嫌いなのに。
…最近は、先生が傍に居てくれることに…安心感を覚えていた。