人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。

季節行事



「メリークリスマス、黒磯さん!」
「………」


勢いよく部屋に入って来た日比野先生。
いつもの白衣姿に、サンタの赤い帽子を被っていた。


「メリークリスマス!」
「……」


今日は12月24日。
クリスマス・イブの日。

メリークリスマスと言うには1日早いけれど。
浮かれまくった日比野先生の姿が、少しだけ面白い。


「…何か、反応してくれる?」
「………」


先生の顔を見て、そっと手を叩いてみた。
それは次第に拍手となり、私は無言で拍手を送る。


「…あ。そうだ、黒磯さん。君にもこれを」
「……」


そう言って先生が取り出したのは、トナカイのツノがデザインされたカチューシャ。

それをそっと私の頭に付けた。


「……」
「ふふ、黒磯さん。似合う」


優しく微笑む先生。


似合うのが良いのか悪いのか分からない。
でも、何だか少しだけ…嬉しさを感じた。



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