人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。
結婚
会社を退職し、日比野先生の家で穏やかな日々を過ごしていた。
元々住んでいたアパートから荷物を全て移動させ、契約解除まで済ませている。
「ジャスティス、おいで」
「にゃーん!」
しっかり私にも懐いてくれたジャスティス。
私の心が読めるのか、私が辛いと感じる時はいつも傍に居てくれる。
日比野先生が仕事で居ない間、ジャスティスが代わりに私を守ってくれているようだった。
退職した翌日、私の通帳を先生に渡そうとした。
入院費用など諸々払っても、数百万は残っている。
しかし、先生は受け取ってはくれなかった。
『そのお金は貯蓄しつつ、好きなように使いなさい。今までそれをして来なかった分、君にはそれをする権利がある。生活費は気にしないこと』
なんて言いながら、微笑んだ。
…もう本当に、日比野先生には敵わない。
「…さて」
アパートから持ってきたデスクトップパソコンを、リビングに置かせて貰っている。
そのパソコンで最近、プログラミングを再開した。
好きだったことを思い出す。
それが今の私に課された任務だ。
「……」
自分のペースで、やりたい時にパソコンの前に座って、好きだったプログラミングをする時間。
それが今は、楽しくて楽しくて仕方ない。