人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。
玲司さんと初めてのデート。
プランなんて無くて行き当たりばったりだけど、一緒に居るだけで楽しい特別な時間。
最初は動物園に行って、終わったらカフェでランチをした。
その後、ゲームセンターに行って…玲司さんの好きな格闘ゲームでバトル。
一通り遊んだら、今度はショッピングモールでウインドウショッピング。
合間にフードコートでクレープを食べたり、美味しそうなドリンクを玲司さんと半分こしたり…。
プログラマー時代の私には、想像もできないくらい充実した1日。
楽しくて、嬉しくて。
思わず涙が滲んだ。
「由香里、泣いてる? 大丈夫? 無理して動きすぎたかな」
家までの帰り道。
乗り込んだ電車の心地よい揺れに、心が落ち着く感覚がする。
私の目に浮かんでいる涙に気付いた玲司さんは、そっと顔を覗き込んで来た。
「…ううん、幸せの涙。こんなに楽しかったの、人生で初めて」
「そうか…。これからもっと、一緒に色んなことをしような」
頭を抱き寄せられ、玲司さんの肩にもたれかかる。
温かい、玲司さんの体。
人肌がこんなにも温かくて、触れると落ち着くなんて…全然知らなかった…。
大好きだった、プログラミング。
仕事にできて嬉しかったのに、それを引き換えに私は、多くの物を失っていた。
そして…自暴自棄になって。
人生まで、失いそうになって。
あの時、玲司さんが追い掛けて来てくれなかったら。
私は今、ここに居ない。