人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。


「由香里…今日から一緒に寝よう」
「……え?」

帰宅後、玲司さんからそんな言葉が飛び出した。

「夫婦になったんだから」
「……」



玲司さんの家に来てから、与えて貰った部屋で就寝していた私。

よく考えたら当然の流れだけど…1ミリも想像していなかった。



「………」



初めて入る、玲司さんの寝室。
そこには大きなダブルベッドが置かれていた。


「……君が来る前に、買ったんだ。君が使っていたシングルベッドは…元々僕が使っていたやつだ」


玲司さんは…本当にやる事が早い。



「…由香里、おいで」
「……」


ベッドの上で手招きをしている玲司さん。
私は大人しく、その隣に腰を掛けた。


「…由香里」

そっと寝かされ、ゆっくりと唇を重ねる。

「由香里、愛してる」
「玲司さん…私も」


何度も唇を重ね、優しいキスを繰り返していると、玲司さんの手が私の体を撫で始めた。


「………」


頭に過ぎる、『初夜』の文字。

…それがどういうことか、理解はしている。

けれど、“そういう経験”が無い私。

…少し未知で、不安だった。



「………」



目を固く瞑って、少しだけ身を震わせていると…玲司さんの手は止まった。


「…ごめん、由香里。怖い?」
「……こちらこそ、すみません。体が勝手に…震えます」
「敬語…」
「あっ…」


玲司さんも私の隣に寝転がり、背後から優しく抱き締めてくれた。


「由香里を怖がらせたくない。ゆっくりで良いから…。今日はこうやって眠っても良いかな?」
「…うん。ごめんなさい、ありがとう…」
「謝るな…」


そう言って、後頭部にそっとキスをしてくれた――…。




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