人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。
産業医
問診票を記入した日から半月後。
面接の日が来た。
自分では良く分からないけれど。
ここ最近の私は、状況が更に悪化しているらしい。
総務部の人が不定期に、私の様子を監視しに来ていた。
「黒磯さん、こちらが会場です」
総務部の加賀さんに連れられてやってきた面接室。
本社内にこんな部屋があることすら知らなかった。
コンコンッ
「日比野先生、失礼致します」
「はい」
加賀さんの後に付いて面接室に入る。
中には白衣を着た若い男性の医者が座っていた。
「本日の面接者、システム部の黒磯由香里さんです。宜しくお願い致します」
そう言って頭を下げ、部屋を出ていく加賀さん。
…この人が、冷酷な産業医。日比野先生。
日比野先生は扉が閉まるのを確認すると、一瞬で眉間に皺を寄せ、私の顔をジッと見つめた。
「……黒磯さん。生気が無い。廃人か」
「……」
先生の、第一声。
いきなり廃人とか言う……?
そう思うが、何か反論する気も起きない。
「まぁ良いや。座って」
「……はい」
指示通り椅子に座る。
「黒磯由香里、31歳ね」
そう呟き、日比野先生は問診票と私の顔を交互に見た。
「仕事内容は、プログラミング?」
「はい」
「毎月…100時間超えの残業?」
「はい」
「何でこの仕事を続けているの?」
「…………」
「ここにはプログラミングが好きだからって書いてあるけれど、変わりない?」
「……」
プログラミングが今も好きなのか。
最早それすら分からない。
答えが見つからず黙り込むと、先生は紙に何かを記入した。