【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
第4話 婚約者の態度の意味
「……苦手」
アルベール様が、私の言葉を復唱する。うん、私はアルベール様のことが大の苦手なのです。この際、開き直ってやろう。……そう思ったけれど、そうは言えなかった。だって、どうにも追い打ちをかけるようになりそうだったから。今のアルベール様は、心の底からショックだとでもいうように、今にも泣きだしそうな表情になられていたから。いや「冷血貴公子」の面影ゼロですよ。何処に行ったの、面影。そう突っ込もうかと思ったけれど、それも止めた。するだけ無駄だ。
「シュゼット嬢は、やっぱり俺のことを捨てる気なのですね……!」
そして、そのお言葉だった。いや、何度も言っているじゃありませんか。捨てられるのは私だって。そう告げるけれど、アルベール様は聞く耳を持ってくださらない。さらには私のドレスを相変わらず掴んで、放さない。もうここまで来れば根性を通り越して執念だ。逃げるに逃げられないじゃない。
「ですから、捨てるとか捨てないとか、そう言うことじゃなくてですね……! あぁ、もうっ!」
もう、このままだと埒が明かない。だったら、もうさっさと納得していただくしかないじゃない。そして、アルベール様側の説明もきちんと聞く。その上で、私が折れるかアルベール様が折れるかの、仁義なき戦いが始まるのだ。……とにかく。まずは、アルベール様の主張を聞こう。そうしないと、何も始まらない。