【完結】素っ気ない婚約者に婚約の解消をお願いしたら、重すぎる愛情を注がれるようになりました
閑話6 リーセロットとアルテュール(リーセロット視点)

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「あぁ、どうしてうまくいきませんの!?」

 マーセン伯爵家のお屋敷に帰ってきたわたくしは、自分の爪を噛みながらそう叫びました。近くにあった椅子を勢いよく蹴り上げれば、侍女がびくりと震えます。……そうですわ。それが正しいのです。誰もがわたくしのことを敬い、怯える。だからこそ、あの貧乏娘の態度が気に食わなかったのです。……何ですか、あのわたくしをバカにしたような無表情は! 何故、表情を恐怖に歪めないのですか!?

「リーセロット様。少々落ち着かれては……」
「貴女、わたくしに意見が出来る立場ですの? クビにされたくなかったら、お下がりなさい! わたくしは今、一人になりたい気分ですのよ!」
「……承知いたしました」

 わたくしの専属侍女を下がらせて、わたくしはソファーにふんぞり返るように座ります。……クールナン侯爵家のご令息との婚約話があると知ったとき、わたくしは舞い上がりました。そして、アルベール様のお姿を見て一目で恋に落ちましたわ。あのお方が、わたくしの生涯の伴侶なのだと、信じていました。疑いませんでした。ですが、ふたを開けてみればその婚約話は白紙。さらにはアルベール様はほかのご令嬢と婚約されてしまいました。……そのお方が、わたくしよりも高貴なお方ならば許せました。なのに、何ですの。どうしてあんな……貧乏娘ですの!?

「シュゼット・カイレなんてわたくしからすれば格下ですのに……!」
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